東大法学部4年 ●●●●●
元教養学部学生自治会常任委員
6月14日に開かれる代議員大会について、規約の改正が執行部から提案されています。私は、現在、全学連(全日本学生自治会総連合)のスタッフとして活動していますが、この問題については、教養学部学生自治会常任委員OBとして看過できない問題があるのではないかと考え、以下、意見を述べます。
もちろん、規約の改正は、自治会員である1、2年生のみなさんの問題です。—OBの意見として読んでいただき、参考にしていただければと思います。
私が一番危惧しているのは、今回の規約改正が、現行規約で定められている正規の手続きをふもうとしていないことです。
学生自治会規約は、代議員や自治委員の方、まして執行部だけのものではなく、会員である全学生を拘束するルールです。規約改正は、正規の手続きにのっとって行われなければなりません。
そういう重みのある規約ですから、現行規約では、他とは区別して、規約改正について特別な手続きを定めています。
具体的には、二つの段階が必要です。
①現行規約37条に、「この規約の改正は代議員大会において議員総数の過半数の賛成によってこれを行う」と定めています(他では「出席議員の過半数」の賛成となっています)。 (後点、引用者)
②さらに、同38条で、「この規約は全学生の過半数の賛成を経たときより効力を発する」とあり、学生投票にかけることが決められています。
この点、現在の執行部がすすめようとしている手続きには問題があると思います。
① 現行規約37条が定めている「代議員大会において議員総数の過半数の賛成」(傍点、引用者)という要件をみたさなくても「改正」をすすめようとしています。
自治会のホームページを見たところ「書面議決」なる制度を使って代議員の意思を確認し、それをもって「議決」とみなそうとしているようです。しかし、現行規約では、そういう制度は存在していません。それを証拠に、今回の規約改定案でこの制度は新たに提案されています。
通常の代議員大会では、開始後、議長を選び、議題を提案者が説明し、その後、参加者全体で議案を討議し、それをふまえて必要な際は修正動議を受け付け、最後に参加者が議案の賛否を決めるというプロセスをふみます。「書面議決」となると、代議員大会が開始もしていないのに、賛否を表明してもらい、それから議論する、というおかしな流れになってしまいます。さらには、代議員大会の議事のなかで原案が修正された場合、どうするのでしょうか?
② 代議員大会で決められた改正について、学生投票で全学生の意思を問うことをせずに、施行しようとしています。
現行規約38条にある「全学生の過半数の賛成」という規約の効力発生の要件について、改正案では、付則で「2012年6月15日から施行する」とし、全学投票を行なわないとされています。
現執行部による規約改正の「コメント」のなかで、38条について「この条は規約の発効時に適用される」とし、改正の際には必要なく、学生投票は必要ないと解釈していると推察されます。つまり、これは現行規約がつくられた際の規定であって、規約の改正には適用されていない、という解釈です。
しかし、こういった解釈は不可能です。規約の成立時に効力を発するために「全学生の過半数の賛成」が必要だったものが、改正時には、必要ない、ということになれば、全学生による検証なしに、全学生が会員である学生自治会の規約が改変されるということになってしまいます。この解釈はなりたちえないと思います。
改正案の内容については、私が問題だと思う点を三つ指摘します。
(1)改正案4条の2について。学生自治会の構成員ではない、教養学部の後期課程生について言及するのは、不適切であり、厳密にいえば後期課程生の自治権への侵害にあたります。
改正案4条の2で「教養後期課程生についても、第二条の目的達成のために努力する」と規定しています。前期課程生(1、2年生)で構成する自治会が、後期課程生(3、4年生)のことについて口を出すのを定めるのは、不適切です。仮に「法学部生についても、第二条の目的達成のために努力する」と書かれれば、少なくとも法学部生である私は不快感をおぼえます。
これは、厳密には、後期課程生が持つ、自分たちのことを自分たちで決めるという自治権への侵害にもあたるのではないでしょうか。
(2)代議員大会、自治委員会の定足数を「過半数」から「4分の1」にする根拠は?
代議員大会と自治委員会について、現行規約では、定足数は「議員の過半数」と定めています。
今回の改正案では、それを4分の1に減らすといいます(改正案16条、同24条)。しかし、現行規約が議員総数の過半数が参加しなければ、会議が成立しない、としたことには、重要な意味があります。
学生自治会は「学生の自治と総意によって」(改正案2条)活動する組織であり、そのことが大学と交渉するなど、全学生の代表として活動する根拠となっています。それでは、「学生の総意によって」活動することを担保しているのは何か。少なくとも議員の相対多数が参加した大会・会議でものごとを決めていることにあります。定足数が4分の1になれば、対外的には、学生の多数を代表する意見とはなりえません。
そのことは、対外的に、学生の代表としての正統性を否定されることになり、学生自治会の活動に様々な支障がでてくると危惧します。
また、同じ条項に、冬学期の大会では定足数に二年生を含めないとなっていますが、これは二年生の権利を奪うものです。定足数に含まれないということは、二年生は大会に参加しても、意思を表明することはできるが、採決に参加できないことになります。
(3)代議員大会の定期開催の廃止は、会員である学生の権利のおおきな縮小になり、学生自治会を形骸化させることになるのではと危惧します。
今回の改正案では、代議員大会の定期開催をなくし、自治委員会を常設の最高議決機関にすることが提案されています。しかし、代議員大会を定期的に開催しないということは、学生一人ひとりにとっては、自らの意見を表明し、自治会の活動に反映させる権利が大幅に縮小されることを意味します。
また、代議員はほぼ8分の1という割合で学生全体から選ばれる議員であるのに対し、自治委員は各クラスから2名の選出であり、その意味合いがそもそも違います。代議員大会は、学生数に比例して選出される議員の会議であり、自治委員会はクラスの代表の集まりです。代議員大会は、学生自治会がより多くの学生の意見を集め、練り上げ、学生を代表する組織にふさわしい決定をおこなううえで、重要な機能を担ってきたと思います。少なくともこの数年来、学生が約200~300人集まっていました。この代議員大会の定期開催を廃止するというのは、その団体のあり方の根幹を決めるものです。だからこそ、今回の改正提案を通して、みなさんが学生自治会のあり方についてよく議論し、学生自治会をより発展させていくことを願い、OBとしての私の意見をしめさせていただきます。
以上
参考
現行規約
・2条「この会は学生の自治と総意によって、学生生活全般の充実向上に努め、学問の自由を擁護し、あわせて文化の発展普及をはかることを目的とする。」
・37条「この規約の改正は代議員大会において議員総数の過半数の賛成によってこれを行う。」
・38条「この規約は全学生の過半数の賛成を経たときより効力を発する。」
改正二次案(執行部提案)
・2条「この会は学生の自治と総意によって、学生生活全般の充実向上に努め、学問の自由を擁護し、あわせて文化の発展普及をはかることを目的とする。」
・4条「この会は東京大学教養学部前期課程生全員をもってこれを組織する。」
2項「本学後期課程生についても、第二条の目的達成のために努力する。」
・15条「代議員大会につきの場合に自治委員長がこれを召集する。一 常任委員会が大会開催を決議した場合(二、三項)」
・16条「代議員大会は議員総数の4分の1以上の出席がなければ、議事をひらき議決を行うことはできない。但し、冬学期に開催されるものについては、2年生を定足数に含めない。」
・24条「自治委員会は議員総数の4分の1以上の出席がなければ、議事をひらき議決を行うことはできない。但し、冬学期に開催されるものについては、2年生を定足数に含めない。」
・38条「この規約の改正は自治委員会において3分の2以上の賛成によってこれを行う。」
・39条「この規約は全学生の過半数の賛成を経たときより効力を発する。」
・附則「この規約は、2012年6月15日から施行する。」
・(現行規約38条へのコメント「[Wユ40]:この条は規約が発効時に適用される。
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