戦後の学生運動の象徴だった全学連(全日本学生自治会総連合)に所属する東京大学教養学部学生自治会が、全学連と都学連(東京都学生自治会連合)から脱退することを代議員大会で決定した。同自治会は理由について「日本共産党による全学連と都学連を通じた不当な支配から脱却するため」としている。
同自治会は全学連の中核的存在。関係者は「全学連にとって存続に関わる問題で、共産党勢力の凋落を裏付ける動き」と指摘している。
全学連は現在、5つの党派が独自に名乗っているが、同自治会が所属していたのは最大組織とされる共産党系の日本民主青年同盟系(民青系)全学連である。同自治会執行部によると、共産党は長年、学生党員を正副委員長に就任させることで、党の指示通りに自治会が動くよう画策、直接または全学連、都学連を通じて、署名活動を指示するなどしてきたとしている。
昨秋、中国籍の委員長を中心に脱退に向けた議論が高まり、執行部内の党員も党に反旗を翻して同調。14日に開かれた代議員大会で脱退が決議された。産経新聞の取材に対して共産党東京都委員会、全学連ともに「不当な介入は一切ない」としている。
かつての東大学生運動の中心的存在だった教養学部学生自治会が全学連から脱退した。運動が下火になった後も40年以上続いた「共産党支配」に終止符を打ったのは、皮肉にも党に心酔して一時は党の”手先”となっていた中国人学生だった。
「彼ら(共産党幹部)は学生自治会を自分たちの従属物としか思っていない。それが許せなかった」
こう憤る教養学部3年生で同自治会前委員長のXさん(20)は全学連脱退を主導した仕掛け人だが、実は高校時代から共産党の機関紙を愛読していた共産党信奉者だった。
Xさんは山口県で育ったが、中国籍のため、党員にはなれなかったものの、入学直後から党活動に加え、同自治会の活動にも積極的に参加し、平成22年12月に委員長に就任した。しかし、翌年の12月には党と決別、党の狡猾な手口による学生自治会支配に嫌気がさしたからだった。
Xさんによると、手口の基本は執行部内の党員に党の方針を指示し、他の執行部員の賛同が得られるよう主張させることだという。そのために行うのが、党員を正副委員長に就任させるという工作だ。
党の支部会議で次期正副委員長候補を勝手に決定。現職委員長に指示して、この候補に活動方針の提案など、役割を多く与え、存在感を高めて自然と委員長に選ばれるように画策する。
Xさんの脱退を契機に、他の執行部員も相次いで賛同、党員2人までも反旗を翻した。教養学部の2年生で、元委員長のQさん(20)は「今は学生運動が盛んだった時代とは違い、共産党的な要求実現一辺倒では学生の支持は得られない」と話す。
全学連にとって自治会の脱退は存続に関わる打撃だ。自治会の分担金は全学連の収入のうち、約4割を占めているほか、役員も多く占めているためだ。
全学連 各大学にある学生自治会の全国組織。学費値上げ反対闘争を背景に、昭和23年に約150大学、20万人以上で結成されたが、徐々に対立を深め、共産主義者同盟(ブント)などの各派に分裂。新左翼系は無党派学生らと全共闘を結成し安保闘争に参加するが、抗争などで弱体化。民青系全学連は現在、加盟数を37としているが、実際は10程度とされる。
産経新聞 2012年6月18日付
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